がん治療
がんの基礎知識

悪性新生物(いわゆる「がん」)は、先進国における死因別死亡率でトップとなっています。日本ではおよそ2人に1人ががんになると言われていますが、そのうち67%が治癒または寛解しています。

日本死因別死亡率(厚生労働省人口動態統計2016より作成)

残念ながら未だがんの特効薬は開発されていません。しかし、がんは早期に発見して適切な治療を行うことで、日常生活を支障なく送ることができるケースが数多く存在します。日本の罹患率は上昇しているにも関わらず、生存率は右肩上がりに上昇しています。これは早期発見と医療技術の向上の結果とも言えるでしょう。
早期発見ががん治療のカギ
早期発見でがんの生存率は大きく変わります。5年生存率は一般にstageⅠの場合80%以上ですが、stageⅣでは10〜30%(部位により異なる)と、極めて予後は悪くなります。早期発見のためには、がん検診を受けることが有効です。
がん検診にはX線検査、内視鏡検査、腫瘍マーカー法、PET-CT検査等、多種多様な項目があります。一種類の検査で診断することはできず、複数の検査結果と臨床所見を、臨床医が総合的に判断して診断を下します。
X線検査

X線を照射して、異常な影があるかどうかを調べます。
内視鏡検査

上部消化管なら鼻または口、下部消化管なら肛門から小型カメラ付きの細い管を挿入して観察します。
腫瘍マーカー法

体液(主に血液)中のがんに特異的な物質を測定する、スクリーニング法です。
PET-CT検査
がん細胞は正常細胞の3〜8倍のグルコースを細胞内に取り込みます。この特性を活かして、標識した18F-FDGを体内に投与し、がんの局在を調べるのがPET検査です。CT画像と組み合わせることで、より精度が高くなります。
日本のがん治療
がんの代表的な治療方法は、「外科的切除」、「薬物療法(抗がん剤治療)」、「放射線治療」の三大治療が主体です。その他、「免疫治療」、「温熱療法」、「代替医療(健康食品・サプリメント)」等もあります。
免疫治療
最近の研究では、がん細胞が免疫細胞にブレーキをかけて免疫細胞の攻撃を阻害することがわかっています。このブレーキを解除することによって免疫細胞の働きを再活性化し、がん細胞を攻撃できるようにする新たな治療法が考案されました。免疫療法は、従来の化学療法に比べて副作用が少ないと報告されています。免疫チェックポイントと呼ばれているPD-L1とPD-1の結合を阻害する薬(免疫チェックポイント阻害薬)が使用されるようになっています。
その他、「サイトカイン療法」、「細胞免疫療法」、「ワクチン療法」、「抗体療法」、「遺伝子治療」、「免疫賦活(BRM)療法」など様々な種類の免疫療法が存在しますが、治療効果が認められるがんの種類も今はまだ限られており、研究開発中のものも数多く存在するため、選択には専門家による的確なアドバイスが不可欠です。

出典:「国立がん研究センターがん情報サービス」より転載
温熱療法
がん細胞は正常細胞に比べて熱に弱いという性質を利用して、加温することで治癒を目指す治療法。全身を加温する「全身温熱療法」と、がんとその周辺を加温する「局所温熱療法」があります。
代替医療
健康食品やサプリメントのほか、食事療法、漢方、鍼灸、マッサージ等があります。食品由来成分を用いた健康食品やサプリメントを中心に、有効性や安全性の研究が進んでいます。
高度先端医療のご紹介
手術支援ロボットda Vinchi

da Vinchiサージカルシステム(通称ダヴィンチ)は、米国インテュイティブサージカル社が開発した最先端の手術支援ロボットです。胸腔・腹腔内手術を内視鏡下にて行うことができるため、侵襲性が低く、患者への身体的負担が軽減されると言われています。
2回転以上できる鉗子付アームと15倍に術野を拡大できる内視鏡カメラが搭載されており、執刀医はディスプレイ前に座って遠隔操作を行います。ロボットアームは人間の手先よりも繊細な動きが可能で、手ぶれ補正等の機能もついています。これら高度な機能が搭載されていることにより、執刀医の疲労も少なく、手術の安全性や治療効果が高まります。
日本には200台以上のda Vinchiが設置され、これはアジアにおける設置台数の約半数を占めています。
日本の先端医療研究
「リキッドバイオプシー」がん早期発見への応用
日本ではがん細胞が出すマイクロRNAという物質を検知することで、ステージ0での「超早期発見」を目指す研究が進んでいます。マイクロRNAは、細胞内で遺伝子の働きを調節する物質であり、がん細胞と正常細胞では分泌のパターンが異なると言われています。
複数のがんで、それぞれ固有のマイクロRNAの分泌パターンがあることが特定されています。マイクロRNAの検知によって95%以上の確率で診断が可能とも言われており、今後実用化に期待が高まっています。

Sci Adv. 2017 Dec 15;3(12):e1701133. doi: 10.1126/sciadv.1701133. eCollection 2017 Dec.